非常勤役員の社会保険適用基準について
非常勤役員の社会保険適用基準について
社会保険では、適用事業所に常用的に使用される者が被保険者となりますから、一般の従業員の場合は労働時間が週30時間以上(正確には1日または1週間の労働時間および1ヵ月の労働日数が通常の労働者の概ね4分の3以上)という基準を使って加入の可否を判断します。
ところが役員は労働者ではないため労働時間という概念がそもそもありません(労働契約ではなく委任契約を交わしています)。出勤しなくても役員としての仕事はできますので、社会保険では、常勤、非常勤の名称に関係なくその実態で判断されることになります。
その実態の判断は、総合的なものになるので一言では説明できませんが、「日、週または月の一部について出勤し、きまった業務を行っていることにより報酬を受けている」と判断されれば、たとえ月の出勤が3日とかでも、被保険者になるということです。
非常勤役員とは、会社の週所定労働時間・日数の3/4未満の時間、就業している役員のことではありません。
実はこの非常勤役員の定義については、法令や行政通達などのはっきりした統一的な基準がないのです。ですから、管轄の年金事務所によって判断基準が微妙に違ったり、文言は同じだがニュアンスが違うなんていうことは珍しくありません。担当者レベルで判断が分かれることもよくあります。
この非常勤の例として多いケースが、社長の奥さんを非常勤としているケースです。常に会社に出勤している訳ではないが、ある決まった仕事をしており、役員報酬が低額(8万円以下の非課税を目的)に設定し、社長の被扶養者としているような場合です。
この場合でも、今での説明から考えると、社会保険上の取り扱いは被保険者に該当するということになります。
ではどうすればよいのかということになりますが、間違いのない具体的な対応策は次の2通りしかないと思われます。
1 役員報酬を無報酬にする。
2 役員を辞任させ、労働者として時間管理をし、賃金としてしはらう。
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ちなみに「代表取締役社長」に関しては明らかに業務執行権を有していると考えられますので、非常勤として取り扱うことはできません。
なお、非常勤役員として社会保険に加入させていなかった役員が社保調査(年金事務所や会計検査院による社会保険調査)などの際に、「実態として常用的使用関係が認められるため非常勤といえない」と判断されれば、そこから2年間さかのぼって加入させられ保険料を徴収されることになるので、勤務実態を考慮せず名前だけ非常勤役員にして安易に社会保険からはずすべきではありません。